恋人と朝を過ごす 目を覚ますと──なんだか、やけにベッドが柔らかい。 あれ? ここは、自分の部屋じゃない……? 俺は驚いて、上半身を少し起き上がらせた。部屋を見回す。レースのカーテンが朝の光を優しく濾過して、部屋全体をほんのり明るく照らしていた。 ああ、そうだ。恋人の家に泊まりに来ていたんだった。 俺はホッと息を吐いて、再びマットレスに身を預けた。ふかふかの布団が、身体を包み込む。彼女の香りがする。 隣には誰もいない。トイレにでも行ったのだろうか。俺は手を伸ばして、シーツをそっと撫でた。まだ温かさが残っている。つい先ほどまで、ここに彼女がいた証拠だ。 それにしても──昨晩は、良い時間を過ごした。一緒に料理をしたり、あーんをし合ったり、映画を観ながら抱き合ったり、キスをしたり……。 思い出すだけで、顔がにやけてくる。ぐふふ。ちゃんと、恋人らしい一日だった。 にやけた口元から涎が垂れそうになるのに気づいて、俺は慌てて手の甲で拭った。 その時、静かにドアが開いた。「起きた?」 優しい声。普段より少し幼い、素顔の恋人が入ってくる。モコモコのパジャマを身に着けたその姿は、小動物のようで愛らしい。「チューしてくれたら、起きるー」「えー? もーう」 彼女は少し困ったように笑いながら、ベッドに近づいてくる。そして、ゆっくりと覆いかぶさってきた。 長い髪が、俺の顔にかかる。さらさらとした感触。その髪を、そっと耳の後ろにかけてあげた。 彼女は穏やかに微笑み、徐々に顔を近づけてくる。それを受け止めるように、俺もそっと目を閉じた。 唇が触れ合う、その瞬間を待ちながら──。「ははっ!?」 柔らかな感触の前に訪れたのは、思わず笑いが漏れてしまう、電流のようなあの刺激。「笑ったら、チューできないよ?」 思わず目を開けた先に、悪戯っぽく口角を上げている彼女。その両手は、がっつりと俺の横腹を掴んでいる。「こちょこちょしてくるからじゃん……!」「えー」 彼女は、くすくすと笑いながら、さらに顔を寄せてくる。息がかかるほどの至近距離だ。「でも、こういうの……好きなんでしょ?」 甘い声と、温かい吐息が耳を弄ぶ。ゾクリと、背中が反った。 否定できないのが悲しい……!! 以前のお泊りで、俺が『くすぐりフェチ』かつ『ぐら』であることが、彼女にバレてしまった。それ以来、恋人があえて意地悪な行動をとるように──いや、おそらく素なのだろう。ぐりになってあげなきゃではなく、よく分からないけど楽しいからやっているというタイプだ。だからこそ厄介である。「チューするために、我慢してね」 そして、再び顔を近づけてくる。 俺は、彼女の手元を凝視した。いつ、指が動き出すのか。その瞬間を見逃さないために。「だめ。恥ずかしいから、目つぶって」 突然、そんな要望が降りかかってくる。予測できない状態でくすぐられたら、余計に我慢できないのだが……! 心の中で抗議するものの、可愛い恋人のお願いだ。仕方なく、俺は目をつぶった。 視界が暗闇に包まれた途端、他の感覚が牙を剥く。彼女の吐息。シーツが擦れる、わずかな音。 脇腹をツーッと、細い指先が滑っていった。「ふふっ!」 心臓が跳ね、反射的に身体がビクンと浮き上がる。「がまんがまん」 彼女が楽しげに囁く。 指は止まらない。脇腹からお腹を通って、おへそに辿り着いた。第一関節ほど差し込まれると、へそのゴマを取るように優しく優しくほじくられる。「くっ、ははっ!」 掠れた笑いが漏れる。到底、耐えられるはずもない。俺は彼女の手首を掴んで抵抗した。「だーめ。おてては、頭の後ろ」 彼女の声が、少し甘えたように響く。けれど、その口調とは裏腹に要求は容赦ない。 恋人に両手首を掴まれると、そのまま誘導され、頭と枕の間に両手が挟み込まれる。身体は、お好きにどうぞとばかりに、完全に無防備だ。「チューしたいのに、できないね?」 彼女が、人差し指で俺の唇をぷにぷにと押してくる。まるで、自分には非がないというように無邪気な笑顔で。「……こちょこちょやめたら、できるよ?」 恋人を見上げながら、口を尖らせてみせる。「んー? こういうの、嫌?」 彼女が、小首を傾げて尋ねる。 嫌だと言えないのが悔しい……!! 朝っぱらからアクセル全開なことに驚かされたものの、全然あり。ありよりのあり。 そんなこちらの心情を見透かしたのか、彼女はくすりと笑いをこぼした。「それに……本当にチューしたかったら、こちょこちょぐらい耐えれるよね?」 その言葉と同時に、大きく開かれた腋に、恋人の両手がそっと乗せられた。「んっ……!」 俺は息を呑む。彼女の親指が動き出す。皮膚を上下に擦るように。「ぐっ、ふふ……!」 つい、声が漏れる。一番の弱点である腋を触られて、足がシーツを蹴るようにモゾモゾ動く。「目、閉じて?」 恋人の命令が、優しく降りてくる。 俺は、素直に従った。目をそっと閉じる。 今の段階でこれなら、笑い崩れるとでも思っているだろう。だが、俺は我慢してみせる。口付けを交わすために……! 相変わらず、彼女の親指は、俺の腋を指圧するように往復している。深いところを直接刺激されるような感覚。「んっ、んん……!」 歯を食いしばる。くすぐったさはあるが、笑いを堪えられるレベルだ。「あと、十センチ」 彼女が、丁寧に距離を教えてくれる。 顔を寄せるペースが、あまりにも遅い。けれど、文句を言えるほどの余裕はない。 必死に、耐えることだけに集中する。「あと、五センチ」 言葉通り、彼女の声がより近くで聞こえるようになった。 何より、親指が二の腕あたりで止まっている。 これなら……耐えられるぞ……?「あと、一センチ」 俺の身体から力が抜ける。思いっきりギュッと閉じていた目も、握りしめていた拳も、少しだけ緩んだ。 ゴールは、もう目の前だ。そう、安心しきっていた。 その瞬間。 突如、責め方が変わった。人差し指と中指が、腋の中央をカリカリと小刻みに搔きだした。緩んだ身体には強すぎる刺激だった。「ぷっ、ははっ!!」 笑いが弾けた。「もーう」 彼女が、手のひらで自分の顔を拭った。吹き出した拍子に、唾を飛ばしてしまったようだ。「ごめん……ひゃっ、はははっ!!」 謝罪するより先に、恋人の両手が腋に伸びてきた。俺は即座に腕を閉じたが、遅かった。彼女の指を挟む形になってしまった。「チューしてくれないから、お仕置き」 十本の指先が、閉じた腋の奥で、クニクニと折り曲げるように動き出す。「あっ、はは!! ゆるしてっ……んはは!」 寝起きということもあってか、声がいつもより出ない。喉の奥で、ひゅーひゅーと息が漏れていく。「んははっ! やばいっひひひひ!」 くすぐりから逃れようと全身を左右に揺らす。だが、お腹に跨った彼女は、離れることなく食らいついてくる。「ぃゃっ、ははは!! むりっ、わきむりぃっははは!」 俺は、彼女の肘を掴んだ。少しだけ腕の力を緩めて、彼女の手を引っ張り出そうと試みる。 しかし、隙間が生まれれば、これ幸いと窪んだところを重点的に、カリカリと責め立てられる。「だめっ!! そこだめぇっへへへ!!」 結果、また腋を閉めざるを得ない。完全に悪循環だ。「ごめんっ! ほんとに、ぃっひひひ!! ごめんなさいっ……っはははは!!」 顔が熱い。頭の芯がジンジンと痺れ、視界が白く霞んでいく。「はい、おしまい」 指の動きが、ピタリと止まる。 全身の力が一気に抜けた。荒い呼吸が室内に響く。頭がボーッとする。「じゃあ、そろそろ起きよっか」 彼女が、俺の頭を優しく撫でた。そのまま少し汗が浮かんだ額に、そっと口付けを落とした。「……ごめん」 俺は、小さく呟いた。「んー? 唾のこと? 全然、怒ってないよ?」「いや、その……」 口ごもってしまう俺に、彼女はきょとんとした様子で首を傾げる。 そして、何か思いついたようにその視線が、下腹部へと向かっていった。スウェットの生地を押し上げ、隠しようもなく熱を帯びてしまったそれ。「……えっち」 彼女は少し頬を染める。その恥ずかしそうな、けれど全てを受け入れているような瞳を見て、俺はもう一度、彼女を布団の中へと引き寄せた。そして、ようやく静かに唇を重ねた。 👏パチパチ 2026.1.11(Sun) 恋人
恋人と朝を過ごす
目を覚ますと──なんだか、やけにベッドが柔らかい。
あれ? ここは、自分の部屋じゃない……?
俺は驚いて、上半身を少し起き上がらせた。部屋を見回す。レースのカーテンが朝の光を優しく濾過して、部屋全体をほんのり明るく照らしていた。
ああ、そうだ。恋人の家に泊まりに来ていたんだった。
俺はホッと息を吐いて、再びマットレスに身を預けた。ふかふかの布団が、身体を包み込む。彼女の香りがする。
隣には誰もいない。トイレにでも行ったのだろうか。俺は手を伸ばして、シーツをそっと撫でた。まだ温かさが残っている。つい先ほどまで、ここに彼女がいた証拠だ。
それにしても──昨晩は、良い時間を過ごした。一緒に料理をしたり、あーんをし合ったり、映画を観ながら抱き合ったり、キスをしたり……。
思い出すだけで、顔がにやけてくる。ぐふふ。ちゃんと、恋人らしい一日だった。
にやけた口元から涎が垂れそうになるのに気づいて、俺は慌てて手の甲で拭った。
その時、静かにドアが開いた。
「起きた?」
優しい声。普段より少し幼い、素顔の恋人が入ってくる。モコモコのパジャマを身に着けたその姿は、小動物のようで愛らしい。
「チューしてくれたら、起きるー」
「えー? もーう」
彼女は少し困ったように笑いながら、ベッドに近づいてくる。そして、ゆっくりと覆いかぶさってきた。
長い髪が、俺の顔にかかる。さらさらとした感触。その髪を、そっと耳の後ろにかけてあげた。
彼女は穏やかに微笑み、徐々に顔を近づけてくる。それを受け止めるように、俺もそっと目を閉じた。
唇が触れ合う、その瞬間を待ちながら──。
「ははっ!?」
柔らかな感触の前に訪れたのは、思わず笑いが漏れてしまう、電流のようなあの刺激。
「笑ったら、チューできないよ?」
思わず目を開けた先に、悪戯っぽく口角を上げている彼女。その両手は、がっつりと俺の横腹を掴んでいる。
「こちょこちょしてくるからじゃん……!」
「えー」
彼女は、くすくすと笑いながら、さらに顔を寄せてくる。息がかかるほどの至近距離だ。
「でも、こういうの……好きなんでしょ?」
甘い声と、温かい吐息が耳を弄ぶ。ゾクリと、背中が反った。
否定できないのが悲しい……!!
以前のお泊りで、俺が『くすぐりフェチ』かつ『ぐら』であることが、彼女にバレてしまった。それ以来、恋人があえて意地悪な行動をとるように──いや、おそらく素なのだろう。ぐりになってあげなきゃではなく、よく分からないけど楽しいからやっているというタイプだ。だからこそ厄介である。
「チューするために、我慢してね」
そして、再び顔を近づけてくる。
俺は、彼女の手元を凝視した。いつ、指が動き出すのか。その瞬間を見逃さないために。
「だめ。恥ずかしいから、目つぶって」
突然、そんな要望が降りかかってくる。予測できない状態でくすぐられたら、余計に我慢できないのだが……!
心の中で抗議するものの、可愛い恋人のお願いだ。仕方なく、俺は目をつぶった。
視界が暗闇に包まれた途端、他の感覚が牙を剥く。彼女の吐息。シーツが擦れる、わずかな音。
脇腹をツーッと、細い指先が滑っていった。
「ふふっ!」
心臓が跳ね、反射的に身体がビクンと浮き上がる。
「がまんがまん」
彼女が楽しげに囁く。
指は止まらない。脇腹からお腹を通って、おへそに辿り着いた。第一関節ほど差し込まれると、へそのゴマを取るように優しく優しくほじくられる。
「くっ、ははっ!」
掠れた笑いが漏れる。到底、耐えられるはずもない。俺は彼女の手首を掴んで抵抗した。
「だーめ。おてては、頭の後ろ」
彼女の声が、少し甘えたように響く。けれど、その口調とは裏腹に要求は容赦ない。
恋人に両手首を掴まれると、そのまま誘導され、頭と枕の間に両手が挟み込まれる。身体は、お好きにどうぞとばかりに、完全に無防備だ。
「チューしたいのに、できないね?」
彼女が、人差し指で俺の唇をぷにぷにと押してくる。まるで、自分には非がないというように無邪気な笑顔で。
「……こちょこちょやめたら、できるよ?」
恋人を見上げながら、口を尖らせてみせる。
「んー? こういうの、嫌?」
彼女が、小首を傾げて尋ねる。
嫌だと言えないのが悔しい……!!
朝っぱらからアクセル全開なことに驚かされたものの、全然あり。ありよりのあり。
そんなこちらの心情を見透かしたのか、彼女はくすりと笑いをこぼした。
「それに……本当にチューしたかったら、こちょこちょぐらい耐えれるよね?」
その言葉と同時に、大きく開かれた腋に、恋人の両手がそっと乗せられた。
「んっ……!」
俺は息を呑む。彼女の親指が動き出す。皮膚を上下に擦るように。
「ぐっ、ふふ……!」
つい、声が漏れる。一番の弱点である腋を触られて、足がシーツを蹴るようにモゾモゾ動く。
「目、閉じて?」
恋人の命令が、優しく降りてくる。
俺は、素直に従った。目をそっと閉じる。
今の段階でこれなら、笑い崩れるとでも思っているだろう。だが、俺は我慢してみせる。口付けを交わすために……!
相変わらず、彼女の親指は、俺の腋を指圧するように往復している。深いところを直接刺激されるような感覚。
「んっ、んん……!」
歯を食いしばる。くすぐったさはあるが、笑いを堪えられるレベルだ。
「あと、十センチ」
彼女が、丁寧に距離を教えてくれる。
顔を寄せるペースが、あまりにも遅い。けれど、文句を言えるほどの余裕はない。
必死に、耐えることだけに集中する。
「あと、五センチ」
言葉通り、彼女の声がより近くで聞こえるようになった。
何より、親指が二の腕あたりで止まっている。
これなら……耐えられるぞ……?
「あと、一センチ」
俺の身体から力が抜ける。思いっきりギュッと閉じていた目も、握りしめていた拳も、少しだけ緩んだ。
ゴールは、もう目の前だ。そう、安心しきっていた。
その瞬間。
突如、責め方が変わった。人差し指と中指が、腋の中央をカリカリと小刻みに搔きだした。緩んだ身体には強すぎる刺激だった。
「ぷっ、ははっ!!」
笑いが弾けた。
「もーう」
彼女が、手のひらで自分の顔を拭った。吹き出した拍子に、唾を飛ばしてしまったようだ。
「ごめん……ひゃっ、はははっ!!」
謝罪するより先に、恋人の両手が腋に伸びてきた。俺は即座に腕を閉じたが、遅かった。彼女の指を挟む形になってしまった。
「チューしてくれないから、お仕置き」
十本の指先が、閉じた腋の奥で、クニクニと折り曲げるように動き出す。
「あっ、はは!! ゆるしてっ……んはは!」
寝起きということもあってか、声がいつもより出ない。喉の奥で、ひゅーひゅーと息が漏れていく。
「んははっ! やばいっひひひひ!」
くすぐりから逃れようと全身を左右に揺らす。だが、お腹に跨った彼女は、離れることなく食らいついてくる。
「ぃゃっ、ははは!! むりっ、わきむりぃっははは!」
俺は、彼女の肘を掴んだ。少しだけ腕の力を緩めて、彼女の手を引っ張り出そうと試みる。
しかし、隙間が生まれれば、これ幸いと窪んだところを重点的に、カリカリと責め立てられる。
「だめっ!! そこだめぇっへへへ!!」
結果、また腋を閉めざるを得ない。完全に悪循環だ。
「ごめんっ! ほんとに、ぃっひひひ!! ごめんなさいっ……っはははは!!」
顔が熱い。頭の芯がジンジンと痺れ、視界が白く霞んでいく。
「はい、おしまい」
指の動きが、ピタリと止まる。
全身の力が一気に抜けた。荒い呼吸が室内に響く。頭がボーッとする。
「じゃあ、そろそろ起きよっか」
彼女が、俺の頭を優しく撫でた。そのまま少し汗が浮かんだ額に、そっと口付けを落とした。
「……ごめん」
俺は、小さく呟いた。
「んー? 唾のこと? 全然、怒ってないよ?」
「いや、その……」
口ごもってしまう俺に、彼女はきょとんとした様子で首を傾げる。
そして、何か思いついたようにその視線が、下腹部へと向かっていった。スウェットの生地を押し上げ、隠しようもなく熱を帯びてしまったそれ。
「……えっち」
彼女は少し頬を染める。その恥ずかしそうな、けれど全てを受け入れているような瞳を見て、俺はもう一度、彼女を布団の中へと引き寄せた。そして、ようやく静かに唇を重ねた。